飯田市街から松川沿いに大平街道を行くと、途中風越山麓の円悟沢にこんこんと泉が湧いています。「猿庫の泉」といって、昭和60年に環境庁の名水百選にも選定されました。
江戸時代、龍渓という人が茶の湯に適した水を求めて天竜川を遡っていたところ、この泉に巡り会ったと伝えられます。その後飯田城主もこの水でお茶を点てたといわれ、飯田の城下に茶の湯文化が広がりました。今、猿庫の泉の一角は広場やあずまやが整備され、地域の人々にとって憩いの場になっています。
ところで、飯田の街並みを歩くと、和菓子屋さんをよく見かけます。これも茶の湯が盛んになったことと無縁ではありません。お茶でお客様をもてなす際に和菓子は不可欠ですし、いい水があったればこそ、おいしい和菓子ができたのです。今なお、お茶の愛好家はもとより、県内外に数多くのお得意さんをもつお店も少なくありません。
飯田の街を例えるのによく山都という言葉が使われます。東西を屏風のような山容に囲まれ、丘の上に立つ飯田は山の都という表現がぴったりです。しかし、猿庫の泉のような名水があって初めてこの城下町で茶の湯文化が栄えたように、山の都は山が大切に育んだ水の都でもあるのです。
猿庫の泉で一息ついて、山麓から飯田の街を眺めるのもいいでしょう。ここからさらに街道を行くと、大平宿の美しい家並みがあります。 |
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